1. はじめに:旅行に「健常者用」しかないのか?
私は生まれつき弱視で、日常生活の中でも健常者とは違った配慮や工夫をしながら暮らしています。障害者手帳のような公的な認定は受けていませんが、人混みや薄暗い場所、視認性の悪い標識には苦労することも多く、「普通の人なら問題ない」場面で立ち止まらざるを得ないこともあります。そんな私にとって「旅行」は、喜びと同時に多くの不安を伴う行為でした。
多くの旅行情報サイトやガイドブックは、健常者を前提とした作りになっています。駅の構造やバリアフリー対応の有無、視覚情報に偏った案内など、見えづらい人間にとっては、旅に出るまでに多くの不安を乗り越えなければなりません。また、体に制限がある人々にとって、旅の自由度はまだまだ十分とは言えません。
しかし一方で、制限があるからこそ感じられる旅の豊かさもあります。景色の美しさだけでなく、誰かの親切、道に迷ったときの工夫、時間をかけて目的地にたどり着く喜び。これらは健常者中心の旅ではなかなか気づかれにくい価値かもしれません。
この記事では、私自身の弱視という立場から感じたこと、そして健常者ではない多くの方が安心して旅を楽しむためのヒントや工夫を紹介していきます。視覚障害だけでなく、聴覚や身体的な制限、発達障害、あるいは高齢による体力の低下など、あらゆる「健常者ではない」状況に配慮した内容を心がけています。
4. 私だから作れる、やさしい旅のプランとは?
私自身が弱視であるという経験、そしてその制限と工夫を繰り返してきたからこそ、「不安が少なく、安心して楽しめる旅」をご提案することができます。旅行業を始めた今、私の視点でしか組み立てられない、やさしい旅のプランをご紹介したいと思います。
まず、私が重視しているのは「情報の透明性」です。旅先のバリアフリー状況や、道順のわかりやすさ、宿泊施設の照明の明るさやエレベーターの有無など、事前にきちんと把握し、それを明確にお伝えします。加えて、現地で困った時の連絡先や、スタッフとのやりとりをサポートする「同行サポート連携」もご用意。視覚障害や身体的制限がある方も安心して旅に出られるような体制を整えています。
例えば「静かな自然に触れたいけど、移動が不安」という方には、宿泊地に温泉や自然散策路が整備された一泊二日のプランを。現地では段差のない遊歩道、点字ブロックや手すり付きのトイレが整っている場所を選定し、のんびりとした滞在を楽しめるように工夫しています。また、宿泊施設のチェックインも、必要に応じて代行サポートを付けられるようにしています。
さらに、視覚・聴覚・発達障害など、多様な特性に合わせたカスタムプランも対応可能です。たとえば、音声案内が充実した美術館、手話対応ガイドがいる施設、照明が柔らかく静かなカフェを中心にした観光ルートなどをご提案できます。私自身が「この場所なら安心できる」と思える場所を厳選して紹介します。
旅行は「行けるかどうか」ではなく、「どうすれば行けるか」を考えることが大切です。そして、制限があるからこそ見える景色、味わえる時間があります。私はその視点を大切にしながら、一人ひとりの「安心して楽しめる旅」のお手伝いをしていきます。
次回は、実際に企画した具体的なモデルプランをご紹介します。どうぞお楽しみに。