つれづれ日記 体験アクティビティ

体験を売る時代へ:インバウンド観光で“選べるプラン”が鍵になる理由

こんな方におすすめ

  • インバウンド向けに新しいツアーや体験プランを開発したい方
  • 地方で観光・地域活性に取り組む事業者や行政関係者
  • 地元の文化・生活を活かして観光ビジネスを始めたい方

ここ数年、インバウンド観光は単なる観光地巡りから「体験重視」へと大きくシフトしています。
“モノを買う”観光から、“コトを味わう”観光へ。旅行者が求めるのは、ガイドブックに載っていない「その土地のリアルな日常」や「自分だけの特別な時間」です。

私自身、これまでに30回以上海外を旅し、ほとんどの旅を1人で計画・行動してきました。だからこそ分かるのは、旅の満足度は“自由に選べる余地”に比例するということです。
本記事では、自身の経験と中国・東南アジアとのビジネス経験をもとに、インバウンド観光における「体験設計」の本質を掘り下げていきます。


選択肢の少ない観光は、もう通用しない

日本の観光業界はいまだに「このプランでどうですか?」というパッケージ主導型が主流です。
しかし、現代の旅行者――特に欧米圏の人々は、細部まで“自分で選びたい”という欲求を強く持っています。たとえば、朝食の卵一つとっても「サニーサイドアップ」「スクランブル」「ポーチド」など、焼き方を指定する文化がある。彼らにとって“オプションの豊富さ”は、サービスの質そのものを示す指標なのです。

だからこそ、ひとつの完成プランだけを提示するスタイルは限界を迎えています。
Aさんには刺さっても、Bさんには退屈、Cさんには高すぎると感じられる――そんな状況が起こりやすい。旅行は嗜好・興味・文化背景・年齢層などによって“求める体験”がまったく異なるからです。

旅行者が「自分で選べた」と感じることは、満足度を飛躍的に高める心理的トリガーになります。
そのため、体験型観光の基本は「複数の小さな選択肢を束ねる」ことです。
たとえば、

  • 朝は地元の市場を歩く or 神社の朝拝を体験

  • 午後は陶芸体験 or 地元カフェ巡り

  • 夜は旅館で懐石 or 屋台で地元料理

このように、旅の中に“選べる余地”を意図的に組み込むことで、旅行者の体験価値は一気に高まります。これが、次世代インバウンド観光の根幹になると私は考えています。


欧米とアジアでは求められる体験の形が違う

インバウンド対応で重要なのは、「誰に向けた体験なのか」を明確に分けて考えることです。
欧米人とアジア人では、旅行に対する価値観がまるで違います。

まず欧米圏の旅行者は、「自分で決めたい」という自主性を重視します。
彼らにとって旅行とは、“自分を再発見する時間”です。
そのため、ガイドに連れられて一斉に移動する団体旅行よりも、個人で自由に選択し、現地の生活文化に溶け込む体験を好みます。
たとえば「地元の人と料理を作る」「古民家に宿泊する」「田舎の祭りに参加する」といった“リアルローカル体験”は、欧米市場において特に人気です。

一方で、中国・韓国・東南アジアの富裕層旅行者は真逆です。
彼らは「時間効率」と「安心感」を最優先に考えます。
言葉の壁、文化の違い、治安への不安などから、**“1から10まで面倒を見てくれるトータルコーディネート型”**を望みます。
実際、私が中国に滞在していた頃、日本人の私に対して現地の方々がしてくれたアテンドは驚くほど丁寧でした。空港送迎からホテル、食事、観光、買い物、会食まで、すべてをサポートしてくれたのです。

この経験からも分かるのは、市場ごとに異なる“安心感の定義”を理解することが鍵だということ。
欧米人には「自由に決められる安心」、アジア人には「全て任せられる安心」。
どちらも「信頼構築」がベースにありますが、アプローチ方法が根本的に違う。
したがって、旅行業者はターゲット国・地域ごとに“体験設計の方針”を変える必要があるのです。


地域アクティビティこそが差別化の鍵

旅行者が本当に求めているのは、“観光地そのもの”ではなく“そこでしか味わえない日常”です。
たとえば、農家に泊まって収穫体験をする、漁港で漁師と一緒に朝食を取る、地元の工芸職人の工房で実際に手を動かす――そうしたリアルな触れ合いが、記憶に残る旅をつくります。

こうした地域密着型アクティビティには、3つの効果があります。
1️⃣ 地域経済の循環
体験提供者(農家・漁師・職人)が直接報酬を得るため、地域の所得が循環します。
2️⃣ 地域のブランディング
「この体験をするために来る」という目的地型観光へと進化し、観光地の価値を再定義できます。
3️⃣ 旅行者の口コミ拡散
SNS時代では“体験の共有”が最大の宣伝。体験価値が高ければ、自然と世界中に発信されます。

しかし、これらのアクティビティを成功させるには、多様な選択肢と柔軟な組み合わせが不可欠です。
旅行者の関心は多様化しています。自然、食、アート、文化、癒し、サステナビリティ――それぞれのニーズに合わせて選べる形を整備することで、「一度きりの旅」を「何度でも来たい旅」に変えることができます。

私自身、山口県で地域限定旅行業を行う中で実感しているのは、「観光=案内」から「体験=共創」へと役割が変わっているということです。
地元の人の生活に触れ、共に時間を過ごすことが、外国人旅行者にとって最大の感動体験になるのです。


🪶まとめ

これからのインバウンド観光は、“選択肢の多さ”と“体験の深さ”をいかに両立できるかが勝負です。
欧米・アジアを問わず、旅行者は「自分の興味や価値観に合った旅」を求めています。
そのためには、地域ごとの文化や生活を切り出し、多様な形で体験化する力が必要です。

観光業はもう「目的地を案内する仕事」ではなく、「人生の記憶をデザインする仕事」になっています。
地域の人と旅人が出会い、時間を共有し、笑顔を交わす――その瞬間こそが、真の観光の価値です。

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