こんな方におすすめ
- 地域の魅力を“体験型”で売り出したい自治体・事業者
- ツアーガイド・通訳案内士として差別化したい方
- オプショナルツアーの企画に悩んでいる方
近年、日本へのインバウンド需要は再び力強く回復し、多くの海外旅行者が日本各地を訪れるようになりました。外国人旅行者の特徴として、「事前にしっかり旅程を組み、複数都市を移動しながら旅をする」傾向が強く、東京だけ、京都だけ、といった“一点集中型”ではないケースが一般的です。こうした旅のスタイルの中で、特に重要性が増しているのが「オプショナルツアー」です。
私自身も、中学生でのカナダホームステイ、社会人として訪れたアメリカでのセスナ飛行など、いわゆる“オプション体験”を通して、旅の価値が大きく変わる瞬間を何度も味わってきました。
この記事では、そうした実体験を踏まえつつ、日本を訪れる外国人旅行者にとってオプショナルツアーがどのような意味を持つのか、そして旅行業に携わる側がどんな価値を提供できるのかを考えていきます。
外国人旅行者は「点」ではなく「線」で旅をする
外国人旅行者の旅の組み立て方には、日本人との違いがあります。
日本人の旅行は「1か所に滞在して完結する」ことが多いのに対し、外国の方々は東京→大阪→北海道のように、**東西へ大きく移動しながら複数都市を巡る“線的な旅”**を好みます。
また、個人旅行でも事前に綿密な旅程を組む傾向が強く、ガイドをつけるかどうかは別として「目的地と体験内容をあらかじめ選び、その上に旅を組み立てる」というスタイルが一般的です。
その中で、旅の“核心”になるのがオプショナルツアー。
滞在地ごとに、その土地でしか味わえない非日常の体験を追加することで、旅全体の価値が大きく高まるのです。
私が最初に体験した“オプショナル的な旅”:13歳のカナダ
初めてオプション体験らしいものを味わったのは中学3年の頃。
3週間のカナダホームステイでした。
本来は「ホストファミリーの家で暮らし、学校へ行く」というシンプルな滞在ですが、私の場合はホスト家族との関係性がうまくいかず、別のステイ先の友人たちと行動することが増えました。結果として、キャンプや交流など、学校以外での“体験”が滞在の中心になったのです。
今振り返れば、これはまさにオプショナルツアーの原型でした。
・日常とは違う環境で
・自分では選べなかった体験に触れ
・その国の文化や価値観に出会う
英語力や不安などの壁も含め、カナダでの出来事は私の人生で強い印象を残しました。「体験が人を成長させる」という事実を、当時すでに感じていたのです。
社会人でのアメリカ研修旅行とセスナ体験
2度目の大きな“オプショナル体験”は、社会人になる直前の研修旅行。
ロサンゼルスとサンフランシスコを巡る1週間の旅でした。
その中で、自由選択のオプションとして「セスナ遊覧飛行」があり、私は迷わずそれを選びました。小型機に乗り、アメリカ西海岸を空から眺める――日常では絶対に味わえない体験です。
最初は恐怖もありましたが、空から見る街並みは圧巻で、この経験は今でも鮮明に覚えています。
まさに「その土地だからこそ得られる学び」。
これこそが、オプショナルツアーの本質だと実感した瞬間でした。
外国人が日本で求める“学び”と“非日常”
海外の旅行者が日本に求めるものは、ただの観光ではありません。
自国では得られない体験
新しい知識や文化に触れる学び
“非日常”としての日本らしさ
これらを求めて来日している人が非常に多いのです。
特に富裕層であれば、日常生活の延長ではなく「日本でしか得られない深い体験」を欲しています。
・古い日本建築
・武道
・芸術や職人文化
・地域独自の歴史
・土地に根付いた生活文化
こうした“深層的な文化体験”が求められる時代になっています。
私のセスナ経験が「未知の世界への扉」だったように、外国人にとっての日本もまた、新たな学びを得る場であるということです。
インバウンド事業者が意識すべき「価値提供」の本質
旅行業・ガイド業・インバウンド事業に携わる私たちが意識すべきことはただ一つ。
「日常では触れられない体験を、どう提供するか」
外国人旅行者の旅は「非日常を探す旅」であり、
その核となるのがオプショナルツアーです。
・その土地でしかできない体験
・その人の人生を変えるほどの学び
・国の印象を決定づける感動
これらを生み出すためには、旅行者の文化背景や目的、価値観を理解し、その上で“感情に残る体験設計”をすることが求められます。
インバウンドが回復しつつある今こそ、日本側が“ただ案内するだけではない価値”を提供できるかどうかが試されています。
まとめ
オプショナルツアーは、旅に“深さ”と“意味”を与える要素です。
私自身のカナダでの交流体験、アメリカでのセスナ遊覧は、いずれもその後の人生に影響を与えたほどの学びとなりました。
そして今、日本を訪れる外国人旅行者も同じように、
「自国では絶対に味わえない、日本ならではの非日常」
を求めています。
旅行業に携わる者として重要なのは、
その期待にどう応え、どう満足を超える体験を設計するか。
インバウンド需要が回復した今こそ、
“日本でしかできない体験”を提供する価値はますます高まっています。
この記事が、ツアー企画やサービス設計のヒントになれば幸いです。