つれづれ日記 インバウンド観光 地方創生

月並みな観光はもう終わり。地域が生き残るのは“尖り”だけ。

こんな方におすすめ

  • インバウンド向けの新しいサービスを作りたい人
  • 地方創生や地域ブランディングを強化したい自治体担当者
  • 「どこにでもある観光」から脱却したい人

日本への訪日客が再び増加し、インバウンド市場はこれから“本格的な勝負の時代”に入ります。しかし、多くの地域が似たような体験、似たような観光素材を並べるだけでは、外国人旅行者の心は動きません。
特に富裕層を呼び込みたいのであれば、「どこにでもある日本」ではなく、その地域にしかない“尖った価値”を提示する必要があります。

今回は、従来のパッケージツアーでは生み出せない「本当に選ばれる地域になるための視点」についてまとめました。

パッケージツアーでは心は動かない

外国人旅行者が日本を訪れたとき、まず最初に利用しがちなのが「パッケージツアー」です。
食事の場所、観光スポット、移動手段まですべて決められているため、利用者は何も考えずに旅をこなせます。これは一見すると非常に便利で、トラブルも少なく、効率は抜群です。しかし、こうした“決められた旅”には、旅の本質であるはずの「驚き」や「感情の揺れ」がほとんど生まれません。

例えば中国・北京のツアーであれば、誰もが万里の長城に行き、北京ダックを食べ、王府井を歩き、お土産を買って帰ります。アメリカ・ニューヨークでも同様に、自由の女神・タイムズスクエア・セントラルパークなど「ど定番」を回って終わりです。
どの国も“王道コース”は似たようなものなので、確かに外れはなく安心ですが、それと同時に“記憶に残りにくい旅”になってしまうのです。

また、パッケージツアーの多くは「自由時間」を必ず入れていますが、この時間が観光の質を大きく下げてしまう場面が少なくありません。外国人にとって土地勘のない街で、突然「どうぞ自由にお楽しみください」と言われても、多くは何をしていいのかわからず、結果的にショッピングモールをぶらつくだけで終わってしまいます。これは旅行者にとっても、地域にとっても、大きな機会損失です。

この“空白の時間”こそが、オプショナルツアーによって埋めるべき最重要ポイントです。
つまり、外国人が自由時間を“最も価値ある時間”として過ごせるように提案できるかどうか——ここに、地域としての勝敗がかかっています。

観光地の未来は「尖り」で決まる

日本の観光資源は豊富だと言われますが、実際に地域ごとの特徴を比べてみると、多くのエリアが非常によく似ています。
「温泉があります」「海鮮が美味しいです」「自然が綺麗です」「歴史があります」
どれも素晴らしいのですが、外国人からすると“どこにでもある日本の景色”に見えてしまうのが現実です。

だからこそ、今求められているのは「その地域にしかない物語」です。

地域には、表に出ていない文化、土着の風習、意外な歴史的背景、ローカルに紐づく遊び文化、独自の芸術、地域コミュニティの価値観など——外からでは気づかない宝物が必ず眠っています。
これらを丁寧に掘り起こして、他の地域には絶対に真似できない“尖り”として提示することが、これからの観光戦略において最重要です。

例えばあなたが住む山口県には、実は競輪・競艇・競馬といった公営ギャンブル文化が濃く根付いています。これは他県と比較しても非常にユニークな特徴であり、「日本でギャンブル文化を学ぶ」「地方の遊び文化を知る」といった切り口でツアー化する可能性があります。海外には“文化としてのギャンブル学習”に興味を持つ旅行者も多く、発想次第では唯一無二のコンテンツになり得ます。

「伝統文化 × ローカルの遊び文化」
「歴史 × 現代の街の生活」
「美しい景色 × 裏側のリアルな物語」
こうした“ギャップ”こそが地域の強烈な魅力になります。

ただ綺麗なだけでは、どこにも勝てません。
アングラであっても、尖っていてもいい。
むしろその“クセ”こそが、外国人を強く惹きつけるのです。

狙うべきは“富裕層”一択

観光戦略において明確に言えるのは、富裕層をターゲットにしない地域は必ず苦しくなるということです。
なぜなら、一般旅行者は出費の幅が限られ、“地域に落とすお金”が少ないため、訪日客がいくら増えても地域経済の成長につながりにくいからです。

一般旅行者の行動パターンはこうです。

  • 宿泊費をなるべく抑える傾向

  • 食事は1人あたり数千円

  • 観光は“無料スポット”中心

  • 買い物は軽め

  • 行動範囲も狭い

もちろん彼らも大切な旅行者ですが、地域の未来を支える層とは言い難いです。

一方で富裕層は次の特徴があります。

  • 驚きのある体験に対して高額を支払う

  • プロフェッショナルのサービスを好む

  • 滞在時間が長く、消費額も圧倒的に多い

  • 地方にも積極的に訪れる

  • SNSで「世界の富裕層ネットワーク」へ波及する

富裕層は“唯一性”に価値を感じます。
つまり、他では体験できない内容であればあるほど、喜んで対価を払うのです。

富裕層が求めるのは「貴重な体験 × 安心できるサポート × 深い物語性」。
だからこそ、全国一律の観光素材ではなく、**地域ならではの“尖った価値”**の提供こそが鍵になります。

富裕層は「わざわざそこに行く理由」が明確であれば、必ず動きます。
逆に、普通の観光地なら一切興味を示しません。

観光は“地域間競争”。コピーでは生き残れない

訪日客の多くはまず東京・大阪・福岡などの大都市に到着し、そこから次の目的地を探します。
つまり、地域同士は「富裕層をどこへ誘導するか」という競争関係にあります。

この競争に勝つためには、次のことを理解しなければなりません。

  • 観光は“待ちの姿勢”では勝てない

  • 旅行者は“似た場所”にはいかない

  • 他地域のコピーはすぐ埋もれる

  • 誰でも思いつくテーマでは心は動かない

今の観光PRは、正直どこも似ています。
温泉、美味しい海鮮、自然、寺社、歴史ある町並み……
もちろん価値はありますが、それを全国が言っているため差別化になりません。

だからこそ地域は

  • “教科書通りの観光”から脱却する

  • 隠れた資源を世界に伝える

  • ローカル文化の濃い部分を恐れず見せる

  • アングラ要素も戦略的に武器にする

これくらい踏み込む必要があります。

「安全で綺麗で無難」な観光だけでは、今後のインバウンド競争には勝てません。
むしろ、他の地域が言えないテーマをあえて提示することで、旅行者の心を一瞬でつかめる可能性が高まります。

観光は“地域間のポジション争い”。
だからこそ その地域だけの“尖った魅力”を見つけ、磨き、発信すること が未来の勝敗を決めるのです。

まとめ

インバウンド市場は、これから間違いなく拡大します。
しかし、ただ受け身で観光客を待っているだけでは選ばれません。

  • パッケージツアーは記憶に残りにくい

  • 地域は“尖り”で差別化すべき

  • 狙うべきは富裕層

  • コピー戦略では未来はない

地域の個性を掘り起こし、唯一の魅力として磨き上げる。
この取り組みこそが、地方観光の未来を切り拓く鍵になります。

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