こんな方におすすめ
- 有名観光地だけを回る旅行に限界を感じている人
- スーパー、港、工場、商店街などを観光資源にしたい人
- 自分の地域には何もないと思っている人
山口県で観光ツアーを作るとなると、多くの場合は有名な神社、城下町、温泉、海沿いの景色、名物料理などを組み合わせます。
初めて山口県を訪れる人にとって、こうした定番の観光地は外せません。写真映えしやすく、説明もしやすく、旅行商品として販売しやすいからです。
しかし、訪日経験が多い外国人旅行者や、一般的な観光地に飽きた旅行者が求めているのは、本当に有名な場所だけなのでしょうか。
地方のスーパー、工場地帯、無人駅、古い商店街、港、団地、個人経営の食堂など、日本人がわざわざ観光しようとは思わない場所に興味を持つ旅行者もいます。
日本人にとっては日常であり、場合によっては「観光客には見せなくてもよい」と感じる場所です。
ところが、外から来た人にとっては、その日常こそが山口県でしか見られない風景になる可能性があります。
有名観光地は、写真や動画で事前に見ることができます。しかし、地方のスーパーで何が売られているのか、工場のある町で人々がどのように暮らしているのか、バスの少ない地域で高齢者がどのように移動しているのかは、実際に訪れなければ分かりません。
この記事では、日本人であればお金を払って参加しそうにない場所をあえて組み合わせ、外国人や訪日リピーターに向けた「日本人が絶対に参加しない山口県ツアー」の可能性を考えます。
地方スーパーとホームセンターを本気で観光する
日本人が山口県内を旅行するとき、地元のスーパーを観光目的で訪れることはほとんどありません。
旅行中に飲み物や食べ物を買うために立ち寄ることはあっても、売り場をじっくり見て回るために予定へ組み込む人は少ないでしょう。
しかし、外国人旅行者にとって、日本のスーパーは地域文化を知ることができる場所です。
魚売り場には、その地域でよく食べられている魚が並びます。総菜売り場を見れば、家庭でどのような料理が食べられているのかが分かります。
調味料、菓子、酒、冷凍食品、弁当の内容にも、地域や生活習慣の違いが表れます。
ただ旅行者をスーパーへ連れて行くだけでは、買い物で終わってしまいます。
重要なのは、何が地域独特なのかを説明することです。
なぜこの魚が多く並んでいるのか。なぜこの総菜が地元でよく食べられているのか。都市部のスーパーと比べて、商品の量や価格にどのような違いがあるのか。
こうした説明があれば、スーパーは小さな食文化博物館になります。
例えば、旅行者に一定の予算を渡し、「山口県らしい商品を三つ選ぶ」という企画もできます。
選んだ理由を聞き、地元の人がよく買う商品と比較するだけでも、文化の違いを楽しめます。
購入した総菜や菓子を、その後の休憩場所で実際に食べる流れにすれば、見学だけで終わりません。
ホームセンターも観光の対象になります。
山口県のように車社会で、戸建て住宅や農地が多い地域では、都市部とは異なる商品が並びます。
農作業用品、除草用品、軽トラック用品、害獣対策商品、防災用品、工具などは、地域の生活を反映しています。
日本人にとっては実用品ですが、海外から来た人には、日本の地方生活を知る手がかりになります。
「なぜ日本の地方では、このような商品が必要なのか」を説明すれば、単なる商品棚が地域生活の展示へ変わります。
有名な料理店で完成した料理を食べるだけでは、その地域の暮らしは見えません。
住民が普段何を買い、何を食べ、どのような道具を使っているのかを見ることで、山口県での生活をより具体的に理解できます。
工場地帯、港、物流施設から山口県の仕事を見る
山口県の観光というと、自然や歴史が中心になりやすく、工場や港は観光とは無関係の場所として扱われがちです。
しかし、山口県で実際に暮らしている人にとって、工場、港、倉庫、トラックは地域経済を支える重要な存在です。
山口県の町を理解するには、美しい景色だけでなく、そこでどのような仕事が行われているのかを見る必要があります。
工場地帯を案内するときは、単に外から設備を見るだけではなく、その工場で何が作られ、原料がどこから運ばれ、完成した製品がどこへ出荷されるのかを説明します。
港に積まれたコンテナや資材も、説明がなければ単なる荷物です。
しかし、中国や東南アジアからどのような商品が入ってくるのか、日本から何が輸出されているのかを伝えれば、山口県と海外とのつながりが見えてきます。
私は通関や国際物流に関わる仕事を経験してきました。
その経験から見ると、港や物流施設には、一般の観光客が知らない多くの物語があります。
商品は海外から日本へ突然届くわけではありません。
輸出者、工場、船会社、港、税関、通関業者、倉庫、運送会社など、多くの人と手続きを経て店頭に並びます。
旅行者が普段使っている商品が、どのような流れで日本へ届くのかを説明すれば、物流は十分に観光テーマになります。
また、工場や港のある町では、周辺の食堂や住宅地にも特徴があります。
働く人向けに量の多い定食を提供する店、交代勤務に合わせて営業する店、トラックが立ち寄りやすい駐車場の広い店などです。
観光客向けの飲食店ではなく、実際に働く人が利用する食堂へ行くことで、地域の仕事と食文化を同時に体験できます。
もちろん、工場や港には安全上の制限があります。
勝手に立ち入ったり、撮影禁止の場所で写真を撮ったりしてはいけません。
だからこそ、許可された見学施設、展望場所、公道から確認できる範囲を組み合わせ、現地のルールを説明する案内人が必要です。
山口県の工場地帯を「景色が悪い場所」として隠すのではなく、「日本の産業と生活を支える場所」として見せる。
これは、自然や歴史だけに頼らない山口県観光の一つの方向です。
無人駅、古い団地、商店街を歩き、地方の現在を知る
日本人が旅行を計画するとき、利用者の少ない駅や古い団地、空き店舗の多い商店街を目的地に選ぶことはほとんどありません。
住民にとっては、不便さや人口減少を象徴する場所でもあります。
しかし、訪日経験が多く、日本の地方社会に関心のある旅行者にとっては、こうした場所にこそリアルな日本があります。
無人駅では、駅員がいないこと自体が旅行者には珍しく映る可能性があります。
切符はどのように買うのか。乗車時と降車時に何をするのか。なぜ駅員がいなくなったのか。
単に電車へ乗るだけでも、日本の地方交通について考えるきっかけになります。
列車の本数が少ないことも、都市部との違いを示す要素です。
旅行者には、乗り遅れれば次の列車まで長く待つ可能性があることを事前に説明しなければなりません。
その不便さを隠すのではなく、地方で暮らす人が車を必要とする理由と結び付けて説明すれば、交通事情そのものが学びになります。
古い団地や住宅地も、建物を外から眺めるだけでは意味がありません。
どの時代に建てられ、どのような人が入居し、町の発展とどのように関係してきたのかを説明します。
高度経済成長期に人が増え、その後に高齢化や人口減少が進んだ地域では、建物の変化から日本社会の変化を読み取れます。
ただし、住宅地は観光施設ではありません。
住民の生活を邪魔したり、個人宅や人の顔を無断で撮影したりしないよう、明確なルールが必要です。
商店街では、閉まった店だけを見るのではなく、現在も営業を続けている店を訪れます。
店主に協力してもらい、以前の商店街の様子、客層の変化、営業を続ける理由などを聞くことができれば、旅行者にとって深い体験になります。
昔の写真と現在の風景を比較する企画も考えられます。
同じ位置から写真を見比べることで、建物、道路、店、人の流れがどのように変わったのかが分かります。
重要なのは、地方の衰退を見世物にしないことです。
「寂れていて面白い」という視点では、地域住民への敬意がありません。
現在もそこに暮らし、商売を続け、地域を守っている人がいます。
地方の課題だけではなく、その中で工夫を続ける人や、新しい活動を始める人も一緒に紹介する必要があります。
有名観光地だけを回る旅行では、完成された山口県を見ることになります。
無人駅、団地、商店街を歩く旅行では、変化の途中にある山口県を見ることができます。
この違いが、一般的な観光に飽きた旅行者にとって、大きな価値になるのです。
まとめ
日本人が旅行へ行くとき、地方のスーパー、ホームセンター、工場地帯、港、無人駅、団地、古い商店街を目的地に選ぶことはほとんどありません。
どれも住民にとっては日常であり、観光地として考えられてこなかった場所です。
しかし、外国人旅行者や訪日リピーターにとっては、その日常こそが日本の地方を理解するための貴重な材料になります。
スーパーでは地域の食文化、ホームセンターでは地方の生活、工場や港では産業と物流、無人駅では公共交通、商店街や団地では人口や社会の変化を見ることができます。
ただし、珍しい場所へ連れて行くだけでは、旅行商品にはなりません。
なぜそこへ行くのか、何を見るのか、何がほかの地域と違うのかを説明する案内人が必要です。
また、工場、港、住宅地、商店街を扱う以上、安全、撮影、プライバシー、地域住民への配慮も欠かせません。
日本人が絶対に参加しないツアーとは、単に変わった場所を集めた旅行ではありません。
日本人が当たり前すぎて見落としている山口県の日常を、外から来た人に分かる物語へ変えた旅行です。
有名観光地は、旅行者に美しい山口県を見せます。
一方、スーパー、工場、無人駅、商店街を回るツアーは、山口県で人がどのように暮らし、働き、変化に向き合っているのかを見せます。
初めて山口県へ来る人には、定番の観光地が必要です。
しかし、二度目、三度目の日本旅行で、表面的な観光に満足できなくなった人には、このような日常型のツアーが強く響く可能性があります。
山口県には何もないのではありません。
日本人が観光だと思っていない場所に、まだ説明されていない観光資源が残っているのです。